乳がんと遺伝子検査:知っておきたい基礎知識と検査の重要性

乳がんと遺伝子検査:知っておきたい基礎知識と検査の重要性

乳がんは日本人女性のがん罹患率で上位に位置する疾患です。

その一部には遺伝的な要因が大きく関与するケースがあることをご存じでしょうか?

遺伝子検査を通じて乳がんリスクを把握し、適切な対策を講じることで、命を守る手立てが見つかるかもしれません。

本記事では、乳がんにおける遺伝子検査の役割やその意義、対象者、検査の流れについてわかりやすく解説します。

目次

遺伝性乳がんとは?リスクに関連する遺伝子を理解しよう

乳がんのうち、全体の5~10%は遺伝性乳がんとされています

この遺伝性乳がんは、主にBRCA1やBRCA2と呼ばれる遺伝子の変異によって引き起こされます。

BRCA1とBRCA2遺伝子の役割

BRCA1およびBRCA2遺伝子は、細胞のDNA損傷を修復する機能を持ち、がんの発生を防ぐ重要な役割を担っています。

しかし、これらの遺伝子に病的な変異がある場合、乳がんや卵巣がんのリスクが大幅に上昇します。

遺伝子変異がある場合のリスク

  • BRCA1変異:乳がん発症リスクが約60~80%
  • BRCA2変異:乳がん発症リスクが約40~70%

このリスク評価は個人によって異なるため、専門医による診断が必要です。

乳がんの遺伝子検査を受けるべき人とは?

遺伝子検査は、特定のリスク因子を持つ方に対して推奨されます。

以下のような条件に当てはまる場合、検査を検討することが重要です。

  • 家族歴:乳がんや卵巣がんを発症した家族がいる。
  • 若年での乳がん発症:45歳未満で乳がんを診断された。
  • 両側性乳がん:両方の乳房に乳がんが発生した。
  • 男性の乳がん:男性で乳がんを発症したケース。
  • その他のがんとの関連:乳がん以外に卵巣がん、膵がん、前立腺がんなどを発症した家族がいる。

これらの条件に該当する場合は、医療機関での相談が推奨されます。

健康診断における乳がん検査は、対象年齢が40歳以上となっていますが、若くして発症したケースもニュースで知っている方も多いでしょう。

特に家族歴でがん発症が多いようであれば、遺伝子検査を受けてみて、発症リスクがあるかどうかを事前に調べることで、早期の病気予防になるかもしれません。

遺伝子検査の流れ

遺伝子検査は、市販されている検査キットを使うか、医療機関での専門的な手続きで行うかの選択になります。

医療機関の検査例は、以下の流れで行われるのが一般的です。

1.遺伝カウンセリング

検査前には、専門の遺伝カウンセラーや医師によるカウンセリングを受けます。

検査の意義や結果の解釈、心理的な影響について話し合う場です。

2.検体の採取

主に血液を採取し、その中に含まれるDNAを解析します。

唾液による検査が可能な場合もあります。

3.検査結果の説明

検査結果を受け取り、その解釈と今後の対策について医師やカウンセラーと相談します。

結果は陽性、陰性、不明瞭(バリアント・オブ・アンノウン・サイニフィカンス:VUS)に分類されます。

検査結果に基づく具体的な対策

検査で遺伝子変異が確認された場合、いくつかの対策を取ることができます。

1.定期的な検診

乳がんの早期発見のため、乳房MRIや超音波検査を含む高精度な定期検診を受けることが推奨されます。

2.予防的手術

乳房や卵巣の予防的切除を行うことで、がんの発症リスクを大幅に低減できます。

これは非常に個別的な判断が必要なため、医師やカウンセラーと十分に相談してください。

3.薬物療法

ホルモン療法などの薬物を活用し、リスクを低減する方法があります。

具体的な薬剤選択は専門医の指導のもと行われます。

乳がん遺伝子検査の費用や保険適用について

乳がんの遺伝子検査を受ける際、多くの方が気になるのが費用と保険適用の範囲です。

ここでは、日本における遺伝子検査に関する費用の詳細や保険適用条件について詳しく説明します。

1.BRCA1/2遺伝子検査の費用

保険適用時の費用

日本では、特定の条件を満たす場合、BRCA1/2遺伝子検査に健康保険が適用されます。

この場合の自己負担額は約2万~6万円程度となります。

これは、患者さんの保険適用割合(3割負担や2割負担など)により変動します。

自由診療の場合

健康保険が適用されない場合、検査は自由診療となり、費用は10万~20万円以上になるケースが一般的です。

検査機関や病院によって料金に差があるため、事前に確認が必要です。

2.保険適用の条件

遺伝子検査が保険適用となるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • すでに乳がんや卵巣がんを発症している患者であること。
    • 例えば、乳がん治療を行っている際に、BRCA1/2遺伝子変異が存在するか確認するために検査が必要と判断された場合。
  • 医師が検査の必要性を認め、適切な診療計画が策定されていること。
  • 遺伝カウンセリングを受け、患者が検査内容や結果の意味について十分理解していること。

注意点
検査を受ける目的が、発症リスクの評価(予防目的)のみである場合、現時点では保険適用とはなりません。このため、がん未発症の家族が検査を希望する場合は自由診療となることが多いです。

3.保険適用外でのリスク評価と費用

発症リスクを評価するために遺伝子検査を受ける場合(例:家族歴を持つが未発症の方)は、自由診療となります。

この場合の費用には以下が含まれることがあります。

  • 検査そのものの費用:10万~20万円
  • 遺伝カウンセリングの費用:1回あたり5,000円~2万円程度(施設により異なる)

保険適用外の検査でも、自治体や民間保険の補助が利用できる場合がありますので、詳細を確認すると良いでしょう。

4.他の補助や助成制度について

自治体や団体によっては、乳がん検査や予防措置に対する助成金や補助金を提供している場合があります。

また、医療費控除の対象となることもあるため、年間の医療費が一定額を超えた場合は確定申告で申請を検討しましょう。

医療費控除の対象となる例
  • 遺伝子検査費用
  • 検査に付随する医師の診療費やカウンセリング費用
  • 検査のための交通費

5.遺伝子検査後の追加費用

検査結果によっては、予防策や治療のための追加費用が発生することがあります。

薬物療法:リスク低減を目的とした薬物療法が推奨された場合、その薬剤費用が発生します。

定期検診:保険適用で乳房MRIや超音波検査を定期的に受ける場合、年間で数万円の自己負担が発生することがあります。

予防的手術:保険適用となる場合でも、自己負担額が数十万円に達する可能性があります。

費用について不安がある場合は、遺伝子検査を行う前に医療機関や遺伝カウンセラーに詳細を確認し、自身の予算や選択肢に合わせた最適な計画を立てることが大切です。

遺伝カウンセリングの重要性

遺伝子検査においては、心理的な影響や結果の受け止め方が非常に重要です。

検査前後の遺伝カウンセリングを通じて、正しい知識を得るとともに、不安や疑問を解消する機会としてください。

まとめ:不安に感じたらまずカウンセリングを

記事の要点
  • 遺伝性乳がんは全体の5~10%を占め、BRCA1/2遺伝子変異が主な原因。
  • 遺伝子検査は家族歴や若年発症などの特定リスクがある方に推奨される。
  • 検査結果に基づき、定期検診、予防的手術、薬物療法などの対策が可能。
  • 日本では条件を満たせば保険適用となる。
  • 遺伝カウンセリングを活用して正しい判断を。

乳がんにおける遺伝子検査は、リスクを明確にし、早期発見や予防を可能にするための有効な手段です。

自身や家族の健康を守るため、遺伝子検査を検討する際には、専門医やカウンセラーとの相談を忘れずに行いましょう。

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